【リアル・ペイン〜心の旅〜】あらすじ・受賞歴・ラストシーン解説・レビュー

映画

2025年のアカデミー賞を席巻した注目作『リアル・ペイン(原題:A Real Pain)』
本作は、脚本・監督・主演を務めたジェシー・アイゼンバーグと、助演男優賞を受賞したキアラン・カルキンの熱演によって、心に深く残る“喪失と再生の旅”が描かれています。

タイトル:リアル・ペイン〜心の旅〜
監督・脚本:ジェシー・アイゼンバーグ
主演:ジェシー・アイゼンバーグ、キアラン・カルキン
上映時間:1時間29分
ジャンル:ヒューマンドラマ/ロードムービー

あらすじ

物語は、性格がまったく異なる2人の従兄弟、自由奔放なベンジー(キアラン・カルキン)と、神経質な広告マンのデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)が、亡き祖母を偲ぶためポーランドへ旅立つところから始まります。

彼らの祖母はホロコーストの生存者。2人は彼女のルーツをたどりながら、観光バスで“歴史的なトラウマ”の地を巡るツアーに参加します。ユダヤ人としてのアイデンティティや家族の歴史、そして互いへの理解を深めていく旅が、ユーモアと深い感情で描かれています。

受賞歴と評価

🏆 アカデミー賞 助演男優賞(キアラン・カルキン)
🏆ゴールデングローブ賞 助演男優賞(キアラン・カルキン)
🏆インディペンデント・スピリット・アワード 助演演技賞(キアラン・カルキン)
🏆英国アカデミー賞 オリジナル脚本賞受賞(ジェシー・アイゼンバーグ)


カルキンの演技は、悲しみの中にもユーモアを忘れない“ベンジー”というキャラクターを見事に体現し、高い評価を受けました。一方、アイゼンバーグの脚本は、笑いと痛みが絶妙に交差する構成が称賛されています。

ラストシーン解説

ハリウッドの情報エンタメサイト「DEADLINE」のインタビューに対して、監督・脚本・主演を務めたアイゼンバーグはラストシーンをこう語っています。

ベンジーは最後までデヴィッドの家には行かない。つまり、デヴィッドが望んでいたような存在にはならない。
そして、本当のエンディングはモンタージュです。デヴィッドが家に帰って安定した生活を送る姿と、空港で煉獄のような空間にいるベンジーの姿が交互に映る。
空港って、ベンジーにとっては居心地がいい場所なんです。人前ではすごく魅力的で輝けるけれど、長期的な関係は築けない。それが、デイヴィッドとベンジーが疎遠になった理由でもあるし、彼が空港を愛している理由でもある。誰とも深くは関わらないけど、一人でもないように感じられる場所。

感想

ユーモアのある会話やコミカルな展開も多い本作ですが、同時に「抑圧された悲しみ」や「未解決の痛み」と向き合う作品でもあります。
ラストシーンのアイゼンバーグの解説も、とても納得しました。なるほど・・・!!の一言です。
筆者はどちらかというとデヴィット側の人間なので、物語の序盤から、破天荒なベンジーと神経質で常識人のデヴィットの対比がグサグサ刺さりました。
ベンジーみたいな人の放つ魅力って、抗えないんですよね。近くにいると呆れることもあるし、怒りたくなることもあるし、だけど何故か嫌いになれない。そういう引力を持っている人。
このツアーの中でも、ベンジーは周りの参加者の空気を壊すようなことを言ったり、ツアーコンダクターに色々と意見(というか文句)を言ったり、好き勝手しますが、それでもよりみんなと打ち解けていたのはベンジーでした。
ツアーを離れる際にも、ツアーコンダクターからベンジーへは「建設的な意見を言ってくれたのは君が初めてだった」と手厚い感謝の言葉が。一方デヴィットには特に何の言葉もかけられませんでした
常に空気を読み、時には代わりにベンジーの失礼な言動を周りの人に謝り、そしてベンジー自身のケアに・・・とあらゆる方向に気を遣っていたのはデヴィットですが、どうにも報われないというか、そういう気持ちとてもよくわかる気がして切なくなるシーンです。
デヴィット側の人間からすると、ベンジーみたいな人ってとにかく眩しくて、逆立ちしても敵わないような気がするんですが、どっちが良い、悪い、とかではなく、生き方の違い、というメッセージもこの映画の非常に印象的な点でした。
淡々と進むけど、心に何か大切なものを残してくれる、そんな映画です!

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