Netflixの新作英国ドラマ『アドレセンス』は、配信開始以来、全世界で6630万人に視聴され視聴数は今もなお上昇中。(2025年3月31日時点)
近年最も話題となったドラマのひとつとなりました。
このドラマは、13歳の少年が同級生の少女を刺殺したとされる事件を軸に展開し、SNSと親子関係、そして社会がどのように絡み合い、影響を及ぼすのかを鋭く描いています。
あらすじ
13歳の少年ジェイミー(オーウェン・クーパー)が、クラスメートの女子生徒を刺し、命を奪った容疑で逮捕されるところから物語が始まります。
この事件を追う中で、ドラマはジェイミーがどのようにしてその瞬間に至ったのか、そしてSNSでのやり取りがどれだけ大きな影響を与えたのかを徐々に明かしていきます。
アドレセンスが「心をえぐるドラマ」と評される理由
視聴者は事件の最初から最後まで、凄惨なプロセスを見届けることになります。
衝撃的な逮捕劇と最初の警察での取り調べ、事件の全貌を組み立てようとする捜査官たち、ジェイミーの心理状態を評価するために派遣された心理療法士、そしてこの事件によって全ての子育ての選択を見直すことを迫られる家族。
本作が持つ圧倒的なインパクトは、私たちが直面する現実の一端を映し出しています。
その中で、観る人の「親として」「先生として」「かつての子どもとして」の様々な視点に刺さり、心を揺さぶられることが、単なるフィクションにとどまらず「心をえぐるドラマ」と評される理由の一つではないかと思います。
イギリスの学校での無償上映とその意義
『アドレセンス』は、Netflixの取り組みにより、イギリス国内の中等教育機関(中学・高校)で無償上映されることが決定しました。(2025/3/31時点)
英国のスターマー首相も、この取り組みを支持しています。
このドラマが学生たちにとって現実を直視する機会を提供し、ネット上の過激化や偏った価値観がどれだけ深刻な影響を及ぼすかを理解する重要な一歩になることが期待されています。
⚠️ここから各エピソードごとにがっつりネタバレ
【登場人物】
・ジェイミー:容疑者13歳の男の子
・ケイティ:殺害された女の子。ジェイミーの同級生
・バスコム警部:この事件を担当している刑事
・フランク巡査部長:バスコム警部の相方
・アダム:バスコム警部の息子
・ライアン:ジェイミーの友達
・ブリオニー:ジェイミーの事件を担当している心理療法士
・エディ:ジェイミーの父親
・マンダ:ジェイミーの母親
・リサ:ジェイミーの姉
エピソード①
冒頭はジェイミー逮捕のシーンから始まります。連行される車の中から、警察署での手続き一通りまで詳細に描写があり、その後検査が行われます。
写真撮影、口の中の細胞をこすりとる検査、指紋スキャン、血液検査、服をすべて脱いで身体検査などなど、、
そして聴取が始まり、学校の成績や友達の話、インスタの投稿内容など日常の話から話はだんだんと事件の核心に、、
「殺害されたケイティとは友達以上の関係だったのか?」と聞かれ、
「友達ですらない」と答えるジェイミーに対し、
「彼女に好意があったのか?」「2人の間には性的な関係があったのか?」
など、どんどん立ち入った質問になっていきます。
そして、バスコム警部から見せられたのはジェイミーがケイティを尾行した後、暴行を加えている様子が映っている防犯カメラの映像でした。
「何も悪いことはしていない」と警察にも父親にも泣きながら訴え続けるジェイミーですが、はたして真相は、、?
エピソード②
バスコム警部とフランク巡査部長は事件の聞き込みを行うためにジェイミーとケイティの学校に来校します。
ジェイミーが逮捕されたことは既に学校のみんなに知られていました。
バスコム警部達は、ジェイミーとケイティの同級生に二人の関係を聞きますが、みんなから「友達には見えなかった」「近寄りもしなかった」という答えが返ってきます。
しかしジェイミーのインスタ投稿にはケイティからの親しげなコメントが複数残されていたため、「どういうことだ?」と不思議に思うバスコム警部。
その後も聞き込みを続ける警部たちの元にバスコム警部の息子のアダムが現れ、ケイティのコメントの真意を説明します。
一見友好的に見えたケイティからのメッセージの本当の意味は「お前は一生童貞だ」というジェイミーへの悪口でした。
学校を後にする前にもう一度ジェイミーの友達であるライアンと話をしようと、バスコム警部がライアンの教室を訪ねたところ、ライアンはいきなり教室の窓から逃亡。
しかし逃亡もむなしくバスコム警部に捕らえられ、詰め寄られるライアン。
ジェイミーの犯行に使われたのはライアンが渡したナイフだったことを告白し、ライアンは殺人共謀容疑で逮捕されます。
エピソード③
事件から7ヶ月後の話。
心理療法士のブリオニーが、事件の判決前報告書(判事が罪状を見極める手掛かりにするための報告書)を書くためにジェイミーのいる収容訓練施設へ訪問します。
7ヶ月経ったこの時点でもジェイミーは
「僕がここにいるのは間違っている」「そもそもなぜ罪に問われるのか?」「僕がやったなら当然だけど…」と犯行を否定しています。
取り乱すジェイミーに対しブリオニーが座るように言うと、
ジェイミーはいきなり「指図するな!」と叫び、「僕の行動に口出しする権利はないことを頭に叩き込め!」と激昂します。
その後落ち着きを取り戻したジェイミーに再び男性観や女性観についての質問を重ねますが、言うことがコロコロ変わり話に全く整合性がありません。
再び興奮して取り乱したり、ブリオニーを威嚇したり、見下したような表情をしたり、そしてまた自信のなさそうな表情に戻ったりを繰り返しながら、「あの夜僕はナイフを持っていて彼女は怖がっていた」と犯行を認めるような発言をした後、ブリオニーの差し入れのサンドイッチを一口食べます。
そして、ブリオニーから「面談はこれが最後だ」伝えられるとジェイミーはまた激しく動揺します。すがるような態度をとったかと思えば、高圧的な態度で怒鳴りつける、激動のシーン。
警備員の男性に連れられてジェイミーは部屋を後にしますが、部屋の外に出たあとも叫び続け、ブリオニーがいる部屋の窓を何度も激しく叩いていました。
静かに涙を流すブリオニー。机の上の資料とジェイミーの食べかけのサンドイッチを片付けようと手に取った直後、慌ててサンドイッチを放り投げます。
ブリオニーはそのままそのサンドイッチを部屋に残して立ち去ります。
エピソード④
事件から13ヶ月後。
このエピソードではジェイミーの家族のことが描かれます。
この日はジェイミーのお父さん、エディの誕生日。朝から張り切ってご馳走を作るお母さん、マンダ。
そこにジェイミーの姉、リサがリビングに来て「外の車を見た?」と聞きます。家の外に出ると、車には中傷の落書きがされていました。
その落書きを落とす道具を買いにホームセンターへ行きますが、ここでも色々なことが起こり、、父・エディの怒りは頂点に達します。
朝、落書きを見て笑っていた男の子たちを再びホームセンターの駐車場で見つけると、胸ぐらを掴み怒鳴りつけ、少年の自転車を地面に投げます。
そのまま怒りにまかせ、買った塗料をお店の駐車場で車にぶちまけ、注意してきた警備員までも罵倒し、重苦しい空気のなか帰路につく3人。
その帰りの車の中で、収容訓練施設にいるジェイミーから誕生日を祝うため電話があり、最後に「もうすぐ裁判だけど、僕は容疑を認める」と告げられました。
祝うどころではなくなってしまった誕生日。
父・エディと母・マンダは、自宅でジェイミーの事件について改めて話し合います。
「ジェイミーは家に帰るとすぐ部屋にこもってパソコンばかりしていたけど、部屋にいる限りは安全で、悪いことはできないと思っていた」
「自分たちは、親を反面教師にして“良い親”になろうと努めてきた。でも、本当にそれで良かったのか?もっと何かできたはずではないか。今後もその“何か”を考え続ける必要がある。」
そしてラストのシーンでは、父・エディはジェイミーの部屋でひとり崩れ落ちて涙を流します。
まとめ
『アドレセンス』が描くのは、ただの犯罪の物語ではありません。現代社会に生きる私たちが抱える、見えない危険や精神的な問題、そしてそれをどう乗り越えるか。子どもたちを守り、導くために何が必要なのか。真剣に考えるきっかけを与えてくれる作品です。
【引用記事】

